金銭の貸借・保証人

友人から「金を貸してほしい」と言われました。どのようなことに注意して貸したらいいですか。

お金の貸し借りは、「金銭消費貸借契約」として民法に定められています(民法587条~)。お金を借りる方が貸す方に「返す約束」をして、お金を受け取ると成立する契約です。この「返す約束」がなければ、「あげた」ことになってしまいかねません。お金の貸し借りでトラブルが起こる場合、貸したのか、あげたのかということで主張が対立することが多くあります。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、きちんと契約書を作成しておくことが有効です。契約書の体裁は、とくに決まったものはありません。貸した金額、貸した年月日、返済の約束、貸した相手のサイン・印鑑などが必要です。市販の「金銭消費貸借契約証書」がありますので、それを使うのもいいでしょう。鉛筆書きよりもペン書きのほうが、あとで訂正したとのトラブルを防ぐことができます。

また、このほかに、返せなくなってしまったというトラブルも多くあります。貸す相手がきちんと返してくれるかどうか、返せなかった場合はどうするのかということもきちんと考えてから貸すようにしましょう。担保をとったり保証人をつけたりすることも一つの方法です。

万が一、お金を貸してトラブルが起こってしまった場合には、弁護士に相談してください。

数年前、友人にお金を借りましたが、返す日は決めていませんでした。ある日突然、今すぐ全部返せと言われましたが、今すぐ全部返さなければいけないのでしょうか。

お金を借りるときに「いつまで返すか」ということが決まっていればその日に返せばいいですが、返す日を決めていない場合には、貸主は、いついつまでに返してね、と「相当の期間を定めて」返還の催告をすることができます。借りた人は、この催告を受けたら、相当の期間経過後、返さなければならなくなります。つまり、すぐに返さなければいけないわけではないけれども、返せと言われてから「相当の期間」が経ったら返さなければならないのです。

この、「相当の期間」とは、金額等の兼ね合いで多少変化すると考えられていますが、5~14日程度で定められることが多いようです。

逆に、借りた人はいつでも返すことができます。

15年以上前に友人から100万円を借りました。その後ずっと返済せずにいて、とくに返せと言われたこともないのですが、先日、返してくれと言われました。こんなに昔の借金でも返さなければならないのでしょうか。

権利があるのに一定期間以上これを行使(請求)しない場合には、権利がなくなってしまうことがあります。これを消滅時効と言いますが、貸したお金を返してもらう権利にも、消滅時効があります。

原則として、消滅時効の期間は権利を行使することができるようになってから10年です。返済日を定めていれば、その日から10年間請求を受けていなければ、その借金は消滅時効により返さなくてもいいということになります。返済日を定めていなければ、貸した日から相当の期間経過後(Q2参照)、10年間で消滅時効となります。

貸した人は、裁判により請求をするか、差押え等(時効中断事由といいます。)をしなければ、10年の時効期間がどんどん進むことになります。単に「返してくれ」と言い続けるだけでは時効は中断しません。貸した側で、消滅時効にならないようにしたい場合は、10年の時効成立に気をつけるようにしてください。もうすぐ10年になるけれどもどうしたらいいかわからないという場合にも、お早目に弁護士にご相談ください。

逆に、消滅時効になったので返さないという場合には、そのことを相手方に伝える必要があります。口頭でもいいですが、言った、言わないのトラブルを防ぐために内容証明郵便など記録の残る形で伝えるほうがよいでしょう。借りた人が、相談に来る直前にとりあえず一部だけ支払ってしまい(時効の中断と言います)、時効を主張できなくなった例もありますので気をつけてください。

友人から借金の保証人になってくれと頼まれました。保証人になったらどのようなことが起こりますか。

まず、保証人には、「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。

保証人は、お金を借りた人がお金を返せなくなったときに代わりに返済をする責任を負う人のことです。保証人は自分が借りたお金でなくとも返済しなければなりません。ただし、保証人は貸主(=債権者)が返済を求めてきたときに、まずは借りた人(=債務者)に請求してくださいということができます。

連帯保証人は、お金を借りた人の代わりに返済をする責任を負うことは保証人と同じですが、債権者から返済を求められたときにまず債務者に請求してくださいといって返済を拒むことはできません。債権者からすれば、お金のあるほうのどちらに先に請求してもよいということです。

どちらも、自分でお金を借りていなくても返さなければならない可能性があり、さらに保証人よりも連帯保証人のほうがよりその危険は高いということです。

いずれの場合も、債務者の代わりに立て替えて返済をした場合には債務者に立替払いの返済を求めることができます(求償権といいます。)。

しかし、債権者が保証人に返済を求める場合、債務者が返済不能となっていることが多く、立替払いの返済を求めても支払ってもらえるケースは少ないでしょう。このような場合でも、めぼしい財産を見つけるなどすれば、求償のために裁判を起こして回収することも可能です。弁護士にご相談ください。

このように、保証人になると自分が借りたお金でなくとも返済の責任が生じてきます。どうしても返せない場合には、自分の借金ではないにもかかわらず破産しなければならないケースもでてきます。そのことをよく考えて保証人になるかどうかを決めることが大切です。

夫が友人の保証人になっていたようです。先日夫が亡くなったのですが、友人が私(妻)に保証人としての責任を果たすよう言ってきます。私は保証人として返済しなければならないのでしょうか。

保証債務も、一般の債務と同じように相続の対象となりますので、配偶者は保証債務を引き継がなければなりません。

これに対して、相続放棄の手続きをとることもでき、その場合には相続されなくなります。しかし、どうしても相続したい財産がある場合や、すでに相続財産を取得してしまった後に判明した場合などには、相続放棄をすることができないので、相続によって保証債務を負うことになります。

また、妻のほかに相続人がいる場合には、相続人全員が保証債務を引き継ぐことになります。遺産分割協議によって誰かひとりが保証債務を引き継ぐことになっても、貸した人がそれでよいと同意しない限りは全員が責任を免れることができず、法定相続分にしたがって責任を負うことになるので、注意が必要です。

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