法律マメ知識

私の相続事件簿第2弾(全10回) 第5回 離婚・再婚

弁護士 中野 直樹

前妻との間の子の登場

 Aさんは若い頃結婚して子どもが生まれ、しかしすぐに夫婦仲が悪くなって離婚となり、妻が親権者となって幼い子を引き取り、以後何十年も音信がない年月が流れました。晩年のAさんは妹夫婦に支えられながら人生を送り、終末を迎えました。病室のベッドでAさんは世話になった妹夫婦に、自分の残した財産で葬式を出してもらい、なお残ったものはお前たちのために使ってくれと言い遺しました。妹夫婦は、Aさんの子どもの居場所もわからないことから連絡もできず、Aさんの遺志に従って葬儀を行いました。
 その後になって、Aさんが死亡したとの情報を得たAさんの子がAさんの妹夫婦に連絡をしてきて、相続人としての権利主張を始めました。妹夫婦は納得がいきません。いくら人生をともにしていないとしても、法定相続人である子の相続権を否定することはできませんが、私は妹夫婦の立場に立って次のようにアドバイスしました。葬儀費用の支出については、法定相続人のための「事務管理」として正当化される余地があること、Aさんの生前、妹さんたちが入院費等Aさんのために支出したものがあれば、A相続人である子に「求償」できるので、Aさんの遺産のある程度の部分は確保できますよ。

晩年再婚による家庭騒動

 Bさんの父(70歳代)は、妻をなくした後も元気に一人で生活をしてきました。父は貸家をいくつももち経済的には裕福です。この父が最近、ゲートボールで知り合った60歳くらいの女性といっしょに買い物にでかけたり、食事をつくってもらったりすることに気づいたBさんは、この女性が財産目当てで父に近づいてきているのではないかと心配し始めました。そして、とうとう父からこの女性と結婚するとの宣言がなされました。戸籍上の妻となると遺産の半分がこの女性にいってしまいます。私は、Bさんからこれを阻止することはできないかとの相談を受けました。
 これは難題です。高齢者にも結婚の自由はあります。これを止めることはできません。Bさんの父は年齢相応に判断力が低下してきていますが、息子としてこの女性との恋愛の実態まで深く知ることもできません。Bさんと父とがきちんと話し合える関係であれば、父の財産を誰が承継した方がよいのかを冷静に判断して、遺言書を作成することによる対策もとれるのですが、遺言書は作り変えることもできるので完璧な対処とはなりません。さらに父が結婚するという女性も交えて話し合いをもち、Bさんが女性の養子となっておくというのも1つの対処方法です。

2014/08/29
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