法律マメ知識

私の相続事件簿第2弾(全10回) 第1回 遺産の行き先を考えるとき

弁護士 中野 直樹

シリーズ第2弾は

 2013年9月から2014年2月までの間に連載させていただいた「私の相続事件簿10 話」では、私たち弁護士が、相続の案件の相談を受けて代理人として受任をする場合に、まずは、相続人と相続財産の範囲の確定の作業を行うことから始まると述べました。そして、私の事件簿のなかから、相続人探しや遺産の範囲に入るかどうか問題となったケースを素材に盛り込み、説明をしました。
 今回は、自分の遺産を誰に相続させたいか、あるいは相続させたくないか、という少々シビアなところにも触れる切り口で、10 話を語りたいと考えています。

法定相続人・法定相続分

 民法は、相続できる人と相続分を定めています。これを法定相続人・法定相続分と言います。
 家族・親族のうち誰が法定相続人となるかについては、民法が順位をつけて決めています。複数の法定相続人がいる場合に各人の取り分が決められています。これが法定相続分です。
 第1順位は、配偶者と子です。死別・離別で配偶者がいない場合には、法定相続人は子だけとなります。実子も養子も同等の子として法定相続人となります。妻が妊娠中に夫が交通事故死するという悲劇となった場合、お腹の胎児も相続権をもつとされています。

子がいない場合

 現代の日本社会は、結婚していない方、子がいないご夫婦が増えています。
 未婚で子がいない場合の法定相続人は、両親がご存命であれば両親となります。両親が他界されている場合には、兄弟姉妹が法定相続人となります。
 子がいないご夫婦の片方が亡くなられたときには、法定相続人は、配偶者と、被相続人の両親となります。既に両親が死亡しているときには、配偶者と被相続人の兄弟姉妹となります。

代襲相続

 「だいしゅうそうぞく」と呼びます。これは、たとえば、祖父―父―子の親子3代でいうと、父が祖父に先立って、遺児(子)を残して亡くなってしまい、その後年に祖父が死亡した場合に、祖父の遺産について、父の遺児(子)が、亡き父に代わって、亡き父の法定相続分を継承することを指します。兄弟姉妹間相続でも、その子まで代襲相続人となるとされています。

直系と傍系の織りなす相続

 相続の基本は、縦軸ベクトルでの継承です。例外は、配偶者であり、兄弟姉妹間の相続です。日本国憲法24条ができる前は、縦軸を徹底したのが家督相続制度でした。
 一族意識の強い親族の場合、配偶者の血族(姻族といいます)に一族の財産が「流出」することを嫌うことがあります。子どもがいない家族単位が増えている現代社会では、先祖代々の財産、自ら築いてきた財産の継承先をどうするか、新たな問題として浮上しています。苦労した、あるいは成功した自分の人生の証としての面もある「遺産」の行き先について、自分の意思を明確にしておくことが必要となっているのです。

2014/03/05
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