事例紹介

相続人がいない場合の相続財産の処理

弁護士 山下 正祐

 父の後妻さんの老後の世話をしてきた娘さん。とくに養子縁組もしないままに継母が亡くなり、相続人にあたる人がいなかった場合、継母の遺産はどうなったでしょうか?

 

 人が亡くなると相続が開始されます。相続人は民法で順番が決まっていて、まず卑属(子、孫等)、卑属がいない場合は尊属(父母、祖父母等)、尊属がいない場合は兄弟姉妹の順番で、配偶者はこれらの相続人と同列で相続人になります。

 さて、相続人がいない場合はどうなるでしょう。

 相続人がいない場合、相続財産は最終的には国庫に帰属しますが、その前提としての手続が民法に定められています。

 まず、相続人のいない相続財産は法人とされ、相続財産管理人が定められます。相続財産管理人の選任は、利害関係人または検察官の請求により裁判所が定めます。

 相続財産管理人は、相続財産の調査をし、支払うべき債務がある場合にはこれを支払ったうえ、なお残余がある場合、相続財産は最終的には国庫に帰属することになります。

 亡くなった人の債権者は相続財産管理人に対し請求をすることになりますが、亡くなった人と特別の縁故関係(生計を同じくしていたり、療養看護に努めたり)にあった人は、特別縁故者として相続財産の全部または一部の分与を裁判所に請求することができます。

 例えば、事例のように、血のつながりのない親子で、養子縁組もしていなかった場合、相続権はありませんが、場合によっては特別縁故者として遺産を承継することが可能になります。赤の他人でも亡くなった人の世話をしていた人などは、相続財産の一部を取得することもあり得ます。

 事例のケースの場合、全部の遺産を相続することができました。

 なお、一人暮らしで相続人のいない方などは、遺産をどう処理してほしいか遺言を書かれておくのがいいでしょう。

2022/01/17
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