交通事故

交通事故を起こしてしまったのですが、どのような責任を負うことになりますか?

交通事故を起こすと、民事上の責任とともに、刑事上、行政上の責任を問われます。
民事上の責任としては、相手方に生じた損害の賠償責任が生じます。物損事故であれば、相手の車の修繕費などの物的損害、人身事故の場合には、治療費休業損害、慰謝料などの人身上の損害を賠償しなければなりません。
自動車損害保険をかけている場合、通常、保険で処理することができま すので、まずは保険会社に相談してみてください。酒酔い運転など保険の使えない場合もありますので気をつけてください。また、最近では、弁護士費用の特約がついている保険もあり、その場合には、弁護士に依頼すると、その費用が保険から出ます。
任意保険をかけていなくても、傷害事故の場合には120万円、死亡事故の場合には3000万円までは自賠責保険で処理できます。

刑事上の責任は、「業務上過失致死傷罪」(刑法)、「自動車運転死傷行為処罰法違反」や「道路交通法違反(速度違反や安全運転義務違反、酒酔い運転など)」などがあります。事故後、逮捕、勾留される場合もあり、その後、正式裁判にかけられるか略式の裁判(罰金)になります。事情によっては、不起訴処分になる場合もあります。
勾留されると、自分で弁護士を依頼しない場合には、国選弁護人が派遣されます(但し、道路交通法違反は対象外のものが多い)。また、逮捕された段階で弁護士に連絡を取りたいときには、警察官に依頼すれば連絡してくれることになっています。知り合いの弁護士がいない場合には、当番弁護士を頼むこともできます(刑事事件)。

行政上の責任は、免許停止や免許取消などの行政処分です。事故や過失の内容によって、処分内容が違ってきますが、公安委員会で審問(意見聴取)を受けることになります。刑事処分とは別の処分になります。免停や免許取消になったときに運転すると、無免許運転で処罰されることになりますので、気をつけてください。

交通事故に遭ったのですが、加害者にどんな請求ができますか?

怪我をした場合には、治療費、入院費などの費用、通院交通費、怪我により仕事を休まなければならなくなったときには休業補償、そのほか慰謝料などが請求できます。

治療費は、病院から保険会社に請求してもらえば、通常、直接病院に支払われますが、自分で支払った場合は、その分を保険会社または相手方に請求できます。その場合、領収証を必ず保管しておいて下さい。

休業補償を請求するには、仕事を休まざるを得なかった証明書(診断書など)と収入の証明書(給料明細書など)が必要です。
仕事を休んでも給料が支払われていると、休業補償は出ません。
また、休業の必要性が認められないと休業補償が出なくなる場合もありますので、医者の意見を聞きながら対応することが大切です。

慰謝料は、通院期間、入院期間の長さに応じて、一応、基準が決められています。慰謝料がどのくらいになるかは、弁護士など専門家に相談してみてください。

事故による後遺症がある場合には、後遺症の慰謝料と後遺症により生じる収入への影響の損害(後遺症逸失利益)が補償されます。後遺症の認定を取らなければなりませんので、医者ともよく相談してください。

死亡事故の場合には、死亡による慰謝料と将来得られた収入の補償(逸失利益)が請求できます。病院にかかった費用や葬儀費用なども出ます。死亡事故の場合には、遺族(相続人)が請求することになりますが、相続人とは別に、近親者(相続権のない親や内縁の妻など)も慰謝料を請求できます。

そのほかに補償される損害かどうかは、弁護士などの専門家に相談してみてください。なお、損害賠償請求の消滅時効は、損害を知ったときから3年ですので、なるべく早めに相談することが大切です。

交通事故で「むち打ち」になってなかなか直らないのですがどうしたらよいですか?

交通事故のあと、頭痛がする、首が痛い、手がしびれるなどの症状がなかなか治らないという場合があります。いわゆる「むち打ち症」の症状です。治療をするのが基本ですが、治療を続けてもなかなか症状が改善しない場合、後遺症として処理される場合があります。後遺症ということになると、それ以降の治療費は出なくなり、自費で治療することになります。後遺症にする(これ以上よくならない)かどうかは、医者とよく相談してください。

「むち打ち」の治療が長引き、保険会社のほうで、これ以上は治療費を出さないと打ち切ってくる場合がありますので、そのときには、医者に相談するとともに、弁護士など専門家に相談してみてください。治療継続により症状が改善する見通しがあるかどうかが判断のポイントになります。

後遺症ということになると、後遺症の認定を受けることになります。医者の後遺症の診断書を取ったうえで、自賠責保険事務所に請求して、後遺症の認定を受けることになります。後遺症の認定が出れば、それに応じた損害賠償金(補償金)の請求をすることになります(参照)。
自賠責保険事務所の後遺症認定に不服であれば、再審査の請求ができます。まずは、ご相談ください。

通勤の途中で交通事故にあったのですが、労災になるんでしょうか?

通勤途上の事故、仕事中の事故は、原則、労災になります。
損害賠償の保険請求をするときに、自動車保険に請求しても、労災保険に請求してもどちらでも構いません。

労災保険に請求すると、治療費は全額出ますが休業補償は80%しか出ません。慰謝料も出ません。
一方、自動車保険に請求すると、治療費、休業補償は全額出るとともに、慰謝料も出ます。しかし、被害者にも過失があった場合には、過失分の減額(過失相殺参照)がありますので、注意が必要です。

自動車保険と労災保険から二重の請求はできませんので、どちらを優先するかは、よく検討したほうがいいでしょう。
過失相殺の割合が多い場合は、労災保険で請求したほうがいい場合があります。休業補償の補償外部分(20%)や慰謝料は、自動車保険に請求できますが、治療費や休業補償の損害額が、過失相殺により、労災保険で支払われた金額を下回る場合には、それ以上には、自動車保険に請求できません。
また、相手方が自賠責保険にしか入っていない場合、治療は健康保険で行なって、自賠責保険の限度額120万円(傷害の場合)は、できるだけ慰謝料分に回すのがいいでしょう。

交差点で交通事故を起こしたのですが、相手からこちらにも過失があると言われました。過失相殺とはどういうことですか?

交通事故の場合、相手が悪い場合でも、被害者にも一定の過失があるとみなされることがあります。
たとえば、交差点での出会いがしらの事故の場合、信号が赤、青でも違いますが、それでも双方に一定の過失があるとみなされることが多いのです。
どの程度の過失があるかは、いろいろなケースを分類した「認定基準表」が作成されていて、それを基に双方の過失割合を決めることになります。

そして、双方の過失の割合にしたがって、損害の賠償をすることになります。
たとえば、Aが40%の過失、Bが60%の過失があったとすると、Aは、相手の損害に対し40%を補償し、自分の損害の60%を補償してもらうことになります。Bは、逆に相手の損害の60%を補償し、自分の損害の40%を相手に請求することができることになります。
自動車保険に入っている場合、自分の過失による自己負担分は保険で処理してくれる場合がありますが、自損事故の保険に入っていないと自腹を切ることも出てきますので気をつけましょう。

自転車で事故を起こしたのですが、どうしたらよいでしょうか?

自転車の事故も、自動車事故と同じです。相手に怪我をさせたり、場合によっては死亡させたりすることも起こりえますが、運転者に過失があれば、損害賠償の請求を受けるとともに、刑事事件として処罰もされます。

自動車の場合、自賠責保険などの保険が整備されていますので、保険でカバーできる場合が多いのですが、自転車の場合、思わぬ金額の損害賠償を請求される場合があります。万一の場合に備えて自転車保険などの保険に入っておくことをお勧めします。

また、最近、道路交通法が改正されて、自転車の左側通行が義務付けられました。違反すると3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金になります。また、酒酔い酒気帯び運転をはじめ、無灯火自転車、ブレーキの利かない自転車の運転は禁じられています。違反して事故を起こすと、当然、過失の程度が重くなり、賠償額もその分増加することがありえますので、十分気をつけましょう。

自転車事故でも、事故を起こしたときには、弁護士に相談してみてください。

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