労働・労災問題

サービス残業について賃金請求することはできますか?

サービス残業について賃金を請求できます。労働基準法は、使用者は労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならないとし(労基法32条2項)、1週間については休憩時間を除き40時間を超えて労働させてはならない(同条2項)と定めています。労基法が定めた時間を超えて労働させた場合には、2割5分増しの賃金(残業手当)を支払わなければならないと定めています(労基法37条1項)。1カ月に60時間を超えて残業をさせた場合には5割増しの賃金を支払わなければならないと定めています。会社と労働者が「残業手当を支払わない」という契約をしたり、会社の就業規則でそのように定められていても、労基法に違反する労働契約や就業規則は無効であり、残業手当を支払わなければなりません(労基法13条)。ですから、労基法上サービス残業(無償残業)はありえないはずです。

残業手当が支払われない場合、労働基準監督署に相談して会社に行政指導をしてもらって支払わせるとことができますが、労基署から是正勧告を受けても支払わないというケースもあります。また、弁護士を依頼して裁判所に訴えて残業手当を請求することができます。いずれにしても、残業をしたという証拠が必要ですので、タームカードや出勤簿をコピーしておきましょう。

パートタイマーや契約社員に認められる権利とは?

パートタイマーや契約社員も労働者であり、労働基準法はすべての労働者に適用されます。労基法は労働契約、労働時間、休憩、休日、有給休暇などについて定めており、これに違反する労働契約は無効となり、労働条件は労基法の定めた基準によるものとされています。パートの方から「うちの会社にはパートには有給がない」という話を聞きますが、これは労基法違反で、労基法の定めにしたがって有給休暇を取得することができます(労基法39条1項)。また、「契約社員には産休がない」という話も聞きますが、労基法には産前6週間・産後8週間の休暇が保障されています(労基法65条1項)。労基法によってさまざまな権利が保障されていますが、一人で会社に要求するのは大変です。これまでにパートや契約社員など非正規労働者を組織する労働組合に相談して労基法を守らせたという例もたくさんあります。

パートタイマーや契約社員など非正規・有期雇用の労働者の低賃金も大問題です。パート労働法は、職務内容や配置の変更が正規労働者と同一である場合には正規労働者と同一の方法により賃金を決定するよう使用者に努力義務を課しています(パート労働法9条1項)。また、労働契約法は、有期雇用労働者について、職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情に考慮して、正規労働者と比べて賃金など労働条件の相違が不合理と認められるものであってはならない、と定めています(労働契約法20条1項)。まだまだ不十分ですが、非正規労働者について著しく不合理な低賃金を是正する法律ができました。労働組合や弁護士にご相談ください。

会社は労働者を自由に解雇することができますか?

会社には解雇権がありますが、だからといって労働者を自由に解雇することができるわけではありません。

まず、法律で解雇が禁止されている場合があります。労働基準法では、国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)、業務上の労働災害による傷病の休業期間中及びその後30日間の解雇(労基法19条)、産前産後の休業期間中及びその後30日間の解雇(労基法19条)、労働基準監督署等行政機関へ内部告発をしたことを理由とする解雇(労基法104条)を禁止しています。また、男女雇用機会均等法では女性従業員が結婚・妊娠・出産したこと等を理由とする解雇を禁止し、育児・介護休業法では育児休業を申出したり取得したりすることを理由とする解雇が禁止されています。労働組合法では、労働組合員であること、労働組合に加入し結成しようとしたことを理由とする解雇を禁止しています。その他にも法律で解雇を禁止している場合があります。

つぎに、法律で禁止されている場合以外は自由に解雇できるかといえば、そうではありません。労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。客観的合理性を欠く解雇、社会的相当性のない解雇は解雇権の濫用として無効になります。

解雇権の濫用として制限されるのは、どのような場合ですか?

会社と労働者との労働契約(雇用契約)は、労働者は会社の指揮命令下で労務を提供し、会社はその対価として賃金(給与)を支払うという契約です。労働契約法16条に定める客観的合理性の有無、社会的相当性の有無を判断するにあたっては、公務員法が分限免職の事由として、「人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務成績がよくない場合」「心身の故障のために、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」と定めていることが参考になります。例えば、長期間にわたって無断欠勤をしたというように労務の提供に問題があるような場合には、解雇される客観的合理的な理由があると認められることになります。しかし、問題なく勤務し労務を提供しているのに、労働者がHIVに感染しているという理由で解雇したという事例で、裁判所は「著しく社会的相当性の範囲を逸脱した違法行為」であるとして、解雇権濫用で解雇は無効であるとの判決をくだしました。

多くの場合、会社は就業規則をつくり解雇理由を定めています。解雇権濫用に当たるか否かは、就業規則の定める解雇理由に該当するか否かをめぐって争われます。就業規則に「勤務成績不良」という解雇理由を定めているのが多数ですが、その判断は客観的合理性、社会的相当性を欠くものであってはありません。裁判所は、会社が当該労働者にどのような業務命令をしたか、業務について指導をしたのか、等々を考慮したうえで、解雇権の濫用にあたるか否かを判断することになります。

解雇事由の有無の判断はケースバイケースですので、弁護士にご相談ください。

会社の経営が苦しいので解雇すると言われましたが、認めなければなりませんか?

労働者に何の落ち度もないのに会社の経営上の都合で解雇することを整理解雇といいます。判例上、整理解雇は厳しい要件をみたす必要があります。整理解雇が有効とされるためには、第1に企業が厳しい経営危機に陥っていて人員整理の必要性があること、第2に解雇を回避するために相当な措置を講ずる努力をしたこと、第3に解雇回避措置を講じたにもかかわらず、なお、人員整理の必要上解雇する必要があること、第4に被解雇者の選定基準が客観的かつ合理的なものであって、その具体的な適用も公平であること、第5に解雇に至る経過において労働者または労働組合と十分な協議を尽くしたことの各要件を充足することを要します。

1年あるいは半年の有期契約で契約しているパート労働者について、会社の経営が苦しいので契約を更新せず雇止めにするという事例があります。有期契約であっても契約更新を反復継続している場合、雇止めにも整理解雇に関する解雇権濫用の法理が類推適用されます。

なお、会社が倒産した場合、未払い賃金について、「賃金の支払い確保等に関する法律」により一定期間の未払い賃金の8割については、独立行政法人労働者健康福祉機構に対して賃金の立替払いを請求することができます。労働基準監督署や弁護士にご相談ください。

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